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14 託された望み

14 
 「では、話を聞いてくれ。
年寄り衆はそなたらが最初に表れた時から嫌がっている。この前の騒ぎでますますかたくなになった。今は、このあるじ殿がそなたらを預かったこともあって、黙って見ているが、若い衆らと折り合いつけて受け入れようとは考えてもいない。そなたらも同じだ。年寄り衆と心安くなろうとは思ってもいまい。
 だが、この先、このムラで暮らしていくなら、お互いを目にしないでいるのは無理だ。嫌でも相手を認め合い、係わりを持つことができる間柄にならねばならぬ。
 そのための考えだ。この考えが嫌だというなら、石を取りにいくしかない。」
「で、考えってなんだ?」
トギホが気の抜けるような呑気な声で問う。
「年寄り衆に家を譲る。」
「なんだって?」
「だから、みなの協力がいるのだ。」
「それは、むちゃだ。」
「館は半分崩れて、残りの半分がようやく残っているが、いつ全部崩れ落ちてもおかしくない。それに、もともと人の住まいではなく、多くの人が出入りして仕事をする場だったという。住み心地はよくないだろう。
 新しい家を譲れば、きっと喜んで、そなたたち若い衆を良く思うようになる。」
「おれたちの家はどうするんだ。」
「その後で新たに建てればいい。」
「俺たちのあとから年寄りの家を建てればいいじゃないか。」
「彼らにありがたい、と思わせたくはないか?今までの憎しみが感謝に変わるのだ。」
 イブキは自信にあふれた微笑みを一人一人にむけた。
「トギホ、年寄り衆にこう持ちかけて道具を貰ってきてくれ。」
「俺がいくのか?」
「汝(なれ)は、年寄り衆と一番付き合いがある。」
「イブキは行かないのか?」
「汝(なれ)には、重い仕事を受け持ってもらいたい。汝(なれ)が言えば彼らはきっと信用する。大丈夫だ。できたら、石の道具をたくさん作ってもらえ。次々に考える暇なく仕事をして貰え。」
「ひどいな、お前。」

 イブキが振り向くとイワクスは、こまねいた腕のまま、困惑と感嘆の混じったような目で見返した。

「イブキ、最初からそのつもりだったのか。」
夜の炉辺だ。
「いずれ、年寄り衆にも新たに家が要るとは思っていた。主殿は年寄り衆、若者衆それぞれの信を得る。彼ら同士がわだかまりなくうまくいくようになるかどうかは、わからないが。」
「たいした骨折りだぞ。時期を待って石を切りだしに行くよりも手間がかかる。」
「その甲斐はある。ムラに住む者同士として繋がれる。あるじ殿は皆から尊ばれる。」
「お前の手柄だ。」
「あるじ殿、力を持つのは嫌なのか?」
「面倒だ。お前が人を束ねればよい。」
「いや、吾は……。」

 やや、黙している間に、イワクスは寝息を立てている。
この地を立て直すのは、この地のものでなくてはならぬ。やがて大きな力を持って事に当たらねばならない時が来る。この人のほかに誰がそんな役目を負うことができるのだ。
 吾は、違う。吾のために命を落とした者たちが何を望んでいるのか、それが解らぬうちは何もできぬ。

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プロフィール

楠田文貴

Author:楠田文貴
生まれてこの方何をしても
波打ち際でアップアップの人生でした。
で、初めてUP(オイオイ)
波をこえてどこまで行けることやら……
 さて、物語の登場人物たちが
やけに幼いと感じたら、それが
作者の今現在です。
どうぞ寛容をもってお読みください。

初めての方へ
初めての方へ はじめまして、このブログを見つけて下さってありがとうございます。 このブログは第三章からになっています。ここから読んでも差し支えありませんが、以前のお話をお知りになりたい時は 第一章、第二章をホームページ 《れんげ畑と古の森》 に収録してありますので、そちらをご覧ください。 また、古い記事が上になっています。上から順に読み進めていただけます。 お楽しみいただけたら幸いです。 なにかお気づきのこと、ご感想などございましたら、お気軽にコメントをお寄せください。
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