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17 生きるすべ


 17 生きるすべ

 昼過ぎから暗くなるまで若い衆たちは弓矢作りに専念する。カタカシもあれこれ人に聞きながら自分の弓を作っている。矢じりはワタヒマロに頼んだ。取って来た獲物を差し出すことと、トギホを助手に使うことを条件にワタヒマロは一人10本という大量を引きうけた。
「トギホ、すばらしいな。ワタヒマロの信を獲たではないか。そうだ、他の年寄りも、今まで生き残って来たのだ。生き残るための何かがあるはずだ。つながりを深めて、教えを乞うてみろ。」
「俺、子供のころから道具作りが好きだし、父さんの小刀は今でも俺の宝物だ。ワタヒマロはたまたまそれを見て、俺に教える気になったんだよ。他の年よりの技なんて、とても聞きだせないよ。」
「彼らの知恵や技がそのまま朽ち果てるのは、惜しくはないのか?」
「本当に好きなことしか教わる気はないよ。年寄り達が、素晴らしいものを持っていたとして、それは、本当に欲しいやつに受け渡せばいいだろう。」
「イワクス殿といい、汝(なれ)といい、多く欲するのを恥としているのか。よく似た親子だな。」

 若い衆の中で、ひとり弓矢を作らず、何か地面を探している少年がいた。ひょろひょろと風に吹き飛ばされそうな様子で、地面を探している。
「あんた、弓をつくらないの?」
見かけたミツハが声をかけた。
「……弓矢は下手だから……。」
 うつむいたまま、もごもごと聞き取れないような声で答える。
「って、道具も作らなきゃ、うまいも下手もないわ。」
「……いいんだ……。」
 まあこの子、耳が真っ赤だわ、かわいいわね。ミツハは思わずにやにやした。
 気配を察したのかどうか、男はじりじり間を広げるとだっと逃げ出した。
「何を探していたのかしら。」
ミツハは地面を見わたした。砂利交じりの土しかない。ちょっと首をかしげて家に入る。
食事の支度を急がなくては。

 水さらし場に行くとニギホとテグルミが甕を覗き込んでいる。底にさらさらした白いものが沈んでいる。毒を持つ根をすりつぶして、三日前から水で晒していたのだ。
「ほら、上水の色がなくなったわ。もう食べられるわよ。」
ミツハは、今日さらし始めたのと、毒抜きされた水の色を比べてみる。さらしおわった甕は、褐色に濁った上水が消え、澄んだ水がゆるゆると流れている。底にたまっているのはどんぐり粉とよく似た白い粉だ。ニギホに教わって、秋に球根を採ってきてはいたが、ミツハは食べたことがない。今夜はこれに沢山の水とほんの少しの干し貝をいれて煮る。
「でも、なんだか怖いわ。」
ミツハは今までこの根が食べられることを知らなかった。
「知っている人はあまりいないでしょうね。そのまま食べてしまうと死んでしまうこともあるから。恵みが枯れはてたときにも、この草は花をつけたけど、誰も見向きもしなかった。」
テグルミが口をはさむ。
「でも、けっこうおいしいのよ。」
「そうなの?」
「この冬は、これに手を付けるとは思っていなかったわね。掘り出しておいてよかったわ。」
 実際、調理に手間のかかる物ばかりがわずかに残っているだけなのだ。ニギホとテグルミが、近くの森へ木の芽を探しに行った後、ミツハは汁を煮ている。小指の先ほどの干し貝をさらに砕いて味付けに入れてかき混ぜる。こんなに小さくても一人に一つは当たらない。ニギホが何か見つけて来るのを待つばかりだ。
 でも、前の夏のことを思うと今はずっと楽だわ。何もない所を何日も歩き回って、ひだるくて動けなくなったこともあった。嫌だわ、あの嫌な物持ち男を思いだしてしまったわ。でもあいつがいなきゃあそこで弱って死んでたかもしれない。駄目よ、思いだしちゃいけない。他のことを考えよう。
弓矢が整えば、男の人達は狩りにでかける。みんな、どんな獲物を持ってくるかしらね。獣なら鹿が最高ね。イノシシもいいけど。鳥は何がいいかしら。たくさん獲れたら、広場で一つの火を囲んでみんなが満腹するまで食べたいわ。天の星に届くような火を眺めて夜明かしをするのよ。
 

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プロフィール

楠田文貴

Author:楠田文貴
生まれてこの方何をしても
波打ち際でアップアップの人生でした。
で、初めてUP(オイオイ)
波をこえてどこまで行けることやら……
 さて、物語の登場人物たちが
やけに幼いと感じたら、それが
作者の今現在です。
どうぞ寛容をもってお読みください。

初めての方へ
初めての方へ はじめまして、このブログを見つけて下さってありがとうございます。 このブログは第三章からになっています。ここから読んでも差し支えありませんが、以前のお話をお知りになりたい時は 第一章、第二章をホームページ 《れんげ畑と古の森》 に収録してありますので、そちらをご覧ください。 また、古い記事が上になっています。上から順に読み進めていただけます。 お楽しみいただけたら幸いです。 なにかお気づきのこと、ご感想などございましたら、お気軽にコメントをお寄せください。
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