FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

20 枝の上


20 枝の上

 カタカシは外れた矢を拾ってがっかりしている。
「弓矢は初めて作ったんだろう。これからよく当たるのを作ろうぜ。弓の練習もして、次の次の冬にはきっと立派な狩人だ。」
「次の次の冬、そんなに練習しなきゃ当たらないのかあ。長いなあ。」
しょげるカタカシにトギホは吹きだす。
「あっという間だ。」
イワクスも笑った。本当に、子供が大人になるのは本当にあっと言う間だ。

 沼の縁をまわりこんで反対側の岸に寄った。沼は針葉樹の森に入り込んでいる。木々の根元は結氷せず、暗緑に濁った水に沈んでいる。
白鳥の群れは木々の陰に群れ集まって、忙しく鳴き交わしている。
固い雪をがぶった岸辺から一斉に放つ。イワクスとトギホとイブキが一羽ずつ、また三羽しとめた。
トギホが沼に入った。数歩進んだところでずぶずぶと足が沈みこんだ。棒を刺した場所と一歩ずれて深みにはまったのだ。
「助けてくれ。」
皆に引っ張られてトギホはようやく岸に倒れ出た。
「トギホにいさん、油断したね。」
カタカシがくすっと笑う。
「駄目だ。泥が深くて足を取られる。獲物を取りにいけないぞ。」
トギホはまだ息が荒い。
「殺したものを放り出すのは大きな罪だ。なんとか手に入れよう。」
皆に言いながらイワクス自身も、使えそうなものがないかあたりを見回した。
イブキは沼にぐいと張りだしている杉の大枝を見上げた。あの枝から手を伸ばせば拾いあげられないだろうか。指を立てて枝からの距離を測ってみる。
「うーん。」棒を持てば届くか。だが、ずいぶん危ない作業になる。迷っていると、
「そうだ、あの枝に登れば拾えるんじゃないか。」
カタカシが言いも終わらぬうちに木に飛びついて、するすると登った。いや、カタカシの腕では長さが足りない。棒でも持たねば。
棒を、と言おうとしたとき、カタカシは仕留めた一羽の真上に到着していた。
「やっ。」
トギホが驚きの声をあげたとき、カタカシは膝で枝にぶら下がり、手を伸ばした。白鳥を持ちあげ、その姿勢のまま、岸に投げてよこす。それは岸辺ぎりぎりの水に落ちた。トギホは折り枝で引き寄せた。ぶら下がったカタカシから手の長さほど離れてもう一羽の白鳥が浮いている。カタカシはぶらぶら身体を揺らし始めた。揺れにあわせて枝が大きくしなう。その反動を使って白鳥をさらった。
三羽目は、かなり離れている。反対側から伸びている枝からでないと、届きそうにない。カタカシはまたがった枝に突っ伏した。疲れたようだ。
向こう側の木は、水の中から生えている。深さも泥の様子も上からでは分からない。もしもぬかるみにはまったら救けようがない。
罪ではあるが、もう一羽はここに置いて行くしかないか。
イワクスが声をかけようとしたとき、カタカシは思いもかけず、枝の上に立ちぐっと背をかがめた。次の瞬間に飛んだ。目当ての枝に飛び移ったのだ。

カタカシは見事に三羽の白鳥を拾い上げ、一行を罪から救った。
「この狩りで最大の手柄だ。」
イワクスは手を打ってカタカシを讃えた。

次々場所をかえて狩りを繰り返すうちに、鳥たちは警戒して矢を放つ前に飛び立ってしまうようになった。
「今日はここまでだな。」
 イワクスがいった。そろそろ夕闇が迫ってきている。明るいうちに川を渡った。星は明るいが、三日月はあっと言う間に沈む。
「今夜は、ここで野営しよう。」
張り出した崖に聳える松の木の根方に泊まることにした。交替で火の番をする。殊勲者のカタカシは先に眠らせ、夜半までイワクスとトギホが起きていることになった。
スポンサーサイト

コメント

Secret

プロフィール

楠田文貴

Author:楠田文貴
生まれてこの方何をしても
波打ち際でアップアップの人生でした。
で、初めてUP(オイオイ)
波をこえてどこまで行けることやら……
 さて、物語の登場人物たちが
やけに幼いと感じたら、それが
作者の今現在です。
どうぞ寛容をもってお読みください。

初めての方へ
初めての方へ はじめまして、このブログを見つけて下さってありがとうございます。 このブログは第三章からになっています。ここから読んでも差し支えありませんが、以前のお話をお知りになりたい時は 第一章、第二章をホームページ 《れんげ畑と古の森》 に収録してありますので、そちらをご覧ください。 また、古い記事が上になっています。上から順に読み進めていただけます。 お楽しみいただけたら幸いです。 なにかお気づきのこと、ご感想などございましたら、お気軽にコメントをお寄せください。
 目次
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
ブロとも一覧
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
にほんブログ村
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。